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缶詰とドローン
2025.11.21

去る11月12日の国会討議で、国民民主党の榛葉幹事長が突然“連想クイズ”のような質問を投げかけました。
「電子レンジ・サランラップ・缶詰・ボールペン・腕時計……ETCなどから連想されるものは?」
問われた高市総理は即座に「軍事産業」と回答。
このやり取りは、防衛費拡大をめぐる与党の姿勢を後押しするようにも映り、
国防についてのより深い議論の必要性を感じさせる場面でした。
しかしこの一件は、もう一つの気づきを与えてくれました。
――現代の便利な生活を支える多くの技術が、実はもともと“戦争のために生まれたもの”だという事実です。
技術が軍事から民生へと転じる歴史は、決して特別なものではありません。
クイズでも挙げられた「缶詰」もその一つです。
今から約220年前の1804年。後にフランス皇帝となるナポレオン・ボナパルトは、長期行軍の食料確保に頭を悩ませていました。
干し肉や塩漬けの魚ばかりでは兵士の士気が保てず、疲弊する一方だったからです。
そこでナポレオンは、フランス全土に向けて「栄養豊富で美味しい食事を長期保存できる方法」を公募しました。
数多くの応募の中から選ばれたのが、ニコラ・アペールによる “密閉したガラス瓶を加熱殺菌する” という画期的な技術でした。
温めるだけでスープや煮込みが楽しめ、数か月の行軍にも耐える保存性を持つ――。
この功績により、アペールは1万2千フラン(現在価値で3億円超)を授与されたと言われています。
その6年後の1810年、ピーター・デュランドが容器をガラス瓶からブリキ缶へと改良し、現在につながる“缶詰”が誕生します。
“兵士も一人の人間であり、美味しい食事が心を支える”――そんな切実な願いが形になったのです。
一方現在のロシアとウクライナの紛争では、戦場の姿が大きく変貌しました。
その象徴がドローンによる自爆攻撃です。
人間の兵士のように食料や休憩の必要がなく、感情を持ち合わせていないが故に、その行動に躊躇は存在しません。
淡々と、確実に、標的を撃破していく構図は非人道性の極みともいえるでしょう。
しかし同じドローン技術は、荷物運搬や農業、空のイルミネーションなど、平和目的での利用も大きく期待されています。
ここに、技術が常に持ち続ける“二面性”が現れています。
技術そのものに善悪はありません。
それを“戦争の道具”にするのか、“生活を豊かにする手段”とするのか――。
その方向を決めるリーダーを、私たちは主体的に選び取っていく必要があるのではないでしょうか。
A.K